若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

聞こえます!

『今日はラッキー!』をいろんな人に送っている。

縁のある人に読んでほしいからだが、迷惑に感じる人もあると思う。
趣味のものはむつかしい。

卵を送ったのなら、「早めに食べてください」でいいが、本は「早く読んでください」というわけにはいかない。本を読む習慣のない人には迷惑だろう。といって、あなたは本を読みますか、とも聞けない。

好き嫌いもある。見本として三ページほど送って、「こんな本送っていいですか」と聞けばいいのか。

一昨年亡くなった高校三年の時の担任橋本先生の奥さんにも、送ろうかどうしようか迷っていた。かなりのお年のはずだし、奥さんのことはまったく知らない。本を読む人ではないかもしれない。

もしそうならタイトルがまずい。
『今日はラッキー!』
これが『国家の品格』ならおおいばりだ。

本を読まない人が『国家の品格』というタイトルを見たら、まじめな本だと錯覚する。本を読む人間なら、『国家の品格』というタイトルで、中身は駄法螺とはったりの寄せ集めということは読まなくてもわかる。

『今日はラッキー!』というタイトルを見て、むむ、この本は読む価値がある!と見抜ける人は相当な教養の持ち主だけだ。

さんざん迷ったあげく、遅ればせながら先日送ったら昨日早速手紙が来た。

「夕食後、ちょっと目を通そうと思って読み始めたら、ほとんど読んでしまいました」

おお!奥さんがこれほどすばらしい知性と教養と感受性に恵まれた方だったとは!しかも、奥さんは、私の高校の14期先輩だった。一気に親しみを感じる。先生の教え子だったのだろうか。

先日、奥さん達の学年の同窓会があって、先生達は皆亡くなってしまわれたとさびしい思いをしているところへ楽しい本が届いてうれしいですと書いて下さった。

15年前の私たちの学年の同窓会で、私は橋本先生と並んで写真をとった。
奥さんはその写真を見ながら手紙を書いておられる。

「橋本の笑顔のいいこと!」

仲がよかったみたいだ。
便箋に写真がはってある。赤い実をつけた植物だ。

「2000年橋本播種」

亡くなる四年前に先生がまいた種だ。奥さんが毎日ながめている。仲がよければこそだ。悪かったら抜いて捨てる。

最後の文章がうれしい。

「これから残りを読みます。私の笑い声が聞こえるとよろしいのですが」