若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

蛍雪時代

朝刊の広告。
「すべての英語学習に疲れている人へ」幻冬舎が送る『スノーボールの冒険』

これは、「小さな絵物語を音読し、なぞり書きしているうちにいつの間にか英語のエッセンスが身につく、まったく新しい癒し系英語学習本です」

至れり尽くせりと言えばいいのか、かゆいところに手が届くと言えばいいのか、なんでもありと言うのか、恥も外聞もなくと言うか、見えも張りもないと言うか、なりふりかまわずと言うか、えーかげんにせーよと言うべきか、ほんとに何と言っていいのかわからないくらい素晴らしい企画である。

昨日は、高校時代の友人S君の個展を見に行った。最近、私の言うことを素直に聞くようになって、段々絵が良くなってきていると思った。

二人で飲む。
S君とは五年に一度くらいの感じで飲む。

きれいな店だったが、冷酒を頼んだらカップ酒が出てきたので驚いた。
これでいいのか。ラーメンを頼んだらカップラーメンが出てきた、みたいなものではなかろうか。

S君が、高校のとき『蛍雪時代』という受験雑誌にイラストを投稿して、よく採用されたという話をした。聞きはじめだと思った。私が忘れているだけだろうか。

彼は、センスもテクニックも素晴らしかったから、じゅうぶんありうる話だ。自慢しなかったのだろうか。自慢話を聞かされた私が、悔しくておぼえているのがいやで忘れたのだろうか。

いずれにせよ、この話には驚くべきエピソードがあった。

S君が何年か前個展をした時、見に来た中年女性に声をかけられた。

「四十年ほど前、『蛍雪時代』によくイラストを投稿しておられませんでしたか?」

彼が驚いたのは当然だ。
この女性は、『蛍雪時代』にのった彼のイラストに感心して、「この人はきっと将来美術の世界で生きていくだろう」と思ったという。

S君の名前はちょっと珍しいので、新聞で彼の個展の案内を見て、「あ!あの『蛍雪時代』の人に違いない!」と思ったのだ。

感激の対面のあと、その女性が、「四十年前は、ほんとに素晴らしい才能だと思いました。期待して見に来ましたが、がっかりですわ。はたち過ぎればただの人とはよく言ったものですわね」と言ったので、S君がムカッとして「大きなお世話じゃ!」と言い返し、つかみあいのけんかになったのなら楽しい話だが、和気藹々と話が弾んだというのは非常に残念である。