若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

先立つもの

高校でいっしょだったW君からメールが来た。
『今日はラッキー!』で取り上げた人である。

髪型服装自由の我が校にあって、東大入学までは髪の毛を伸ばさないと宣言、丸刈りで通した人だ。三年の時いっしょの組だったが、特に親しいわけではなかったから、私から見れば彼は単に「頭ツルツルの人」だったし、彼から見れば私は単に「紅顔の美少年」だった。

東京の同窓会で、私が彼のことを本の中でサカナにしたことを知って憤慨し、東大入学と同時に伸ばした髪の毛を逆立てて怒ろうとしたものの、遺憾ながら逆立てるほどの毛は残っていなくて意気消沈、「先立つものがないのもわびしいが、逆立つものがないのもわびしい」との名言を残し、がっくりと肩を落として同窓会場をあとにしたというのは気の毒であった。

そのWくんが『今日はラッキー!』を買ってくれてメールをくれたのである。ありがとう。

先立つものと言えばカネであるが、松坂選手60億円、井川選手30億円と景気のいい話だ。
私が小学生のころ、南海ホークスに入団した穴吹選手の契約金が話題になった。私は300万円と思っていたのだが、さっきインターネットで調べたら700万円だったようだ。どっちにしても、五円玉を握って駄菓子屋に走っていた小学生にピンと来る金額ではない。なんだかえらい騒ぎになってるなと思った。

松坂選手や井川選手は、「ポスティング制度」を利用してメージャーリーグに行く。「ポスティング制度」というのがわかりにくいので、若草鹿之助商店プロ野球事業部で調べてもらった。

「ポスティング制度」は、入札によって選手との交渉権を得るもので、俗な言い方をすれば「つばをつける」ということだ。日本語にすれば「郵便制度」。切手につばをつけることからの連想で、選手につばをつけるのを「ポスティング」と呼ぶようになったらしい。

60億円という金額に気を良くして渡米した松坂選手は、ボストンのレッドソックス球団事務所で驚いた。入り口に漢字の看板が立ててあったのだ。

「歓迎!坂松」

むっとした松坂選手は球団関係者に文句を言った。
「失礼じゃないですか。さかさまですよ」
「最大の敬意を表わしたつもりです」
「名前を完全にさかさまにして、おまけに呼び捨て!何が敬意ですか」
「松坂を坂松と書いて、これがホントの、まつさかさまです」
「えーかげんにしなさい!」