昨日の帰り、駅前でバスを待っていたら、うしろで「こんばんは!」という声がした。
なんだか聞きおぼえのある声だ。
私に言ってるのではないだろうと思いながら振り向いたら、あの女性だった。
一年ほど前から、駅前でお経のようなものを唱えたり、改札口を出る人ににこやかにあいさつしている70代と思える女性だ。
この人が、拝むようなかっこうで熱心になにかを唱えているのを見ると、よほどの問題を抱えているのだろうかと、気になっていた。
満面に不自然な笑みを浮かべて、こわごわという感じで私を見ると、名刺の倍くらいの紙をおずおずと差し出した。
受け取ると、こわばったような笑顔をうかべたまま向こうへ行ってしまった。
なんじゃ。
まだまだ修業が足らんな。
未熟者め。
自然な笑顔で立て板に水の教義説明を期待していたのに。
しかたなく紙切れを見る。
「ありがとう観行
天さまありがとう」
「天さまとは、自然そのもの」という注がある。
天さまに続き、両親や家族、人類すべてにありがとうと言いましょう、と訴えている。
しめくくりは、
「今日1日ありがとう
最高です」
「最高です」は、どこかで聞いたことがある。
なんか問題を起こした団体のキメのせりふだったはずだ。
名前を変えて活動しだしたのだろうか。
この「ありがとう観行」は、「毎日午後九時ちょうどに始めるとよい」と書いてある。しかし、かっこして、(午後九時、他一日何回行ってもよい)とも書いてある。
ややこしい書き方である。
これだけ熱心に読んでいる私に解説してやろうという気にならないのかと、横目で見たが、女性は向こうのほうで、なにかを唱えていた。
裏面を見る。
「自然・人類・地球の復活に向けて
人間=水(70%以上)=自然
琵琶湖ありがとう
TMP聖地
よろこび家族の和」
その他色々わけのわからんことが書いてある。
「name」と印刷してある横に、ボールペンでなにか書いてある。
あの女性のサインだろう。
実に乱暴できたない字だ。
判読不能。
「phone」と印刷してある横にケイタイの電話番号。
これは読める。
「Eメール」と印刷してある横に、またも乱暴で判読不能の文字。
かろうじて、「マイナスをプラスにする」という文字が読める。
わかったのはケイタイの電話番号だけだ。
このチラシ、最高です。