若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

門灯

家内が、玄関ドアと門灯を変えたいという。
家内は、部屋の模様替えが好きだ。といっても、私が親しく知っている主婦は、母と家内だけなので、母と比べてということである。

最近は、体力気力の衰えからか、小さなテーブルやイスくらいしか動かさないが、昔は会社から帰って部屋に入って、「ええーーっ!」と目を回して驚いたことが何度もある。
部屋の様子ががらっと変わっているのだ。それも、大物を動かしてある。大きなサイドボード、大きな本棚、たんす。一番びっくりしたのは、ピアノの位置が変わっていたときだ。
一人でどうやって動かしたのだろうかとぼうぜんとした。
念力か。

母はそういうことはしなかった。
というか家もせまかったし物もなかったから、模様替えするまでもない。

母の世代の主婦の常識であろうが、母のモットーは、「節約倹約」であった。使えなくなるまで使う。日用品が使えなくなることなどほとんどないから永遠に使う。

「このはさみは私が女学校の時買ってもらった」
「これは嫁入りの時持ってきた」

こういうことが母の自慢なのであった。私の子供時代、我が家に新しい日用品が増えることはなかった。たまに、「辰巳佐太郎後援会」などと金文字の入ったコップが増えるくらいだった。
掛け軸や玄関の置物は、季節ごとにこまめに変えていた。大学の時、横浜の叔父に世話になったが、叔母は十数年掛け軸を変えなかった。いつ行っても、私の妹の書がかかっていた。

主婦も色々だが、家内は変化をつけるのが好きなほうだと思う。二階のイスを下に持ってきたなと思うと、翌日は元に戻してある。版画をかけたなと思うと、油絵にかわっている。
色々取り替える。
亭主を取り替える気をおこさないのが不思議だ。

自分で動かすのがしんどくなったので、ドアと門灯を変えようというのだろう。私は、母の血を引いているので、まだ使えるものを新しいものに取り替える気はしない。
特に、我が家の前には街灯があって充分明るい。

「門灯なんかいらない」
「いります」
「いらない」
「いります」
「門灯無用!」
「えーかげんにしなさいッ!」
「ほんとにネッ!」