若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ステッキ

新聞の広告。
『声に出して活かす論語70』
声に出すのと鉛筆で書くのと色を塗るのがはやりだ。はやりとは言え次々とよく出すもんだ。

そういうシリーズの中にあって、この本は、「活かす」というのと、「70」というのがミソなのだろう。ただボーっと声に出すだけでなく、活かせる、役に立つ、というのはうれしい。
おトクである。

それに、『論語』と聞いてたじたじとなる人でも、「70」くらいならなんとかなる、と思うだろう。

お手軽でおトク。コレなら売れる!かどうかは知らないが、コレなら売れる!と思って出版するのでしょうな。

先日、高校の美術部の後輩Tくんと飲んだ。
学生時代から40年、二人でよく飲み続けたものだ。

「鉛筆で書く何とか」というようなしょーもない本がはやってるな、と言ったら、彼が、『鉛筆で書く奥の細道』を買ったと言ったので驚いた。
一生懸命鉛筆でなぞっていると言う。

ああいうシリーズを買うのはどんな人かと思っていた。こ、こんな人だったのか。Tくんを目の前にあまり悪口はいえない。

話題を転じる。「鉛筆で書く」シリーズはまだしも、世界の名画とかに色を塗る、塗り絵見たいなしょーもない本もよく出てるなと言ったら、私も塗ってます、と言ったので、かっくんとなった。
鉛筆と色鉛筆を持って一生懸命のTくんを想像できなかった。

Tくんには、時々かっくんとなる。
カラオケがはやりだしたころ、彼につれられて初めてカラオケスナックに行った。彼のなじみの店で、ママがマイクを渡しながら、「Tさん、アレね」と言った。

「おはこ」があるのか。
彼は学生時代シャンソンが好きだった。
シャルル・アズナブールがどうだとか、うるさかった。
当然、シャンソンでしょう。

タイトルが、「夜の銀ぎつね」というので、いかにもシャンソンらしいナ、と思った。
歌いだしたのを聞いてかっくんとなった。演歌ではないか。

しかし、先日の最大のかっくんは「ステッキ」だった。
夏に飲むはずが、彼が腰痛で歩けなくなって延期していたのだが、待ち合わせ場所にステッキをついて現れた彼の姿を見た時は、なんちゅうか、かっくんを通り越してしみじみしてしまった。

彼が気の毒と言うより、自分の姿を見ているようなヘンな気がしたのだ。
どうせなら、修験道の行者が持つような堂々たる杖にしてもらいたい。