某金融機関から送られてくるパンフレットには、「愛のメッセージ」というページがある。
結婚披露宴のあいさつの「模範文例」が、毎回二つずつのっている。
いったいどんな人が書いているのかと不思議に思う。
「ご夫婦の会話について」
結婚は、これまでまったく環境の違った男と女が、一つ屋根の下で暮らすのだから、完全にうまくいくのはむつかしい。
意見の相違が必ずある。
「テレビの別々の番組を見たいと思ったら、お互い合理的な節約をして、お金をためてビデオを買うという夢を持って我慢すれば、また楽しさが生まれるかもしれないのであります」
「合理的節約」「ビデオを買う夢」というのが牧歌的である。
過ぎ去りしすばらしき日々がよみがえる。
披露宴なんかせずにビデオを買ったほうがいい。
「孫子の兵法」
まったく環境のちがうところで育ったお二人がいっしょに暮らせば、我慢しようと思っても我慢しきれない時もあるでしょう。
「そこで私は、中国の戦国時代にできあがった『孫子の兵法』の一節を転記してまいりましたので、これを読み上げたいと思うのであります」
「遠ざかると見せて近づき、近づくと見せて遠ざかる。有利と見せて誘い出し、混乱させて撃滅する。敵が強力なら正面衝突を避ける。下手に出て慢心させる。こうして相手の盲点をつく」
「これからの人生は、ある意味で二人の戦いかもしれません。お二人の幸せのために『孫子の兵法』がいくらかでもお役に立てば私の幸せはこれにすぐるものはありません」
こ、これは・・・?
夫婦喧嘩必勝法?
どちらかにだけ、そっと教えたほうがいいのでは?