結婚式で、打掛姿の長女が、「これまで通り親孝行したい」といったので、カックンとなった私たちですが、別にウチの長女が、親不孝娘というわけではありませんよ。
親の口から言うのも何ですが、「ご覧の通りの才色兼備のお嬢さんでございます」と、披露宴の席で言ってもらってもなんの不思議もないのに、誰も言ってくれませんでしたが、いずれにせよ、親不孝というようなことは断じてございません。
それでも、「これまで通り親孝行をしたい」と言われると、親として困惑の色を隠せないのであった。
これはまあ、「親孝行」という言葉の意味が、はっきりしないことに原因があるといえるでしょう。
私が、「親孝行」という言葉から思い浮かべるのは、「久しぶりで手を引いて、親子で歩けるうれしさよ、おとっつあん、これが二重橋よ、記念の写真を撮りましょう」てな感じかな。
あるいは、箱根の旅館で二泊三日、お湯につかってゆっくりして来て下さいなと、新幹線のホームで手を振って見送ってもらう、というようなとこでしょうか。
まあ、こういう「古典的演歌的親孝行」から抜けきれない私たちだから、カックンとなったり困惑したりするのであって、21世紀グローバル標準で考えれば、別にカックンでも困惑でもないのかもしれない。
「アンタは親孝行しましたか?」と聞かれると、ちょっと困りますね。
手を引いて二重橋の前で記念撮影したわけでもなく、温泉旅行をプレゼントしたわけでもない。
死んだ両親に聞いてもらうほかないですな。
私も、ウチの子供たちのことは、死んでから考えよう。