若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

『金槐和歌集』

金槐和歌集』の「金」は鎌倉表わし、「槐」は「大臣」、つまり、鎌倉幕府の第三代将軍、右大臣源実朝の歌集ということである。
知りませんでした。

家内は、源実朝のファンである。
家内は、ソクラテスドストエフスキーロバート・レッドフォードのファンでもある。

ということは、夫である私は、ソクラテスドストエフスキー源実朝ロバート・レッドフォードを足して四で割ったような男なのだな、と思う人があるだろう。
理詰めで考えるとそうなる。

もっと深読みして、「家内は、ソクラテスドストエフスキー源実朝ロバート・レッドフォードのファンだ」などと書くのは、「私は、ソクラテスドストエフスキー源実朝ロバート・レッドフォードを足して四で割ったような男なんです」と告白しているに等しい、と思う人もあるかもしれない。

問うに落ちず語るに落ちるとはこのこと、若草鹿之助の正体見破ったり!と思う人もあるかもしれない。
まあ、見破られたらしゃーないですね。

さて、『金槐和歌集』である。

もののふの矢並みつくろふ小手の上に霰たばしる那須の篠原

箱根路をわが越えくれば伊豆の海や沖の小島に波の寄るみゆ

おほ海の磯もとどろによする波われてくだけてさけて散るかも

実朝の代表作である、というか、これしか知らない。
いつごろ知ったかも忘れたが、初めて読んだ瞬間に覚えてしまったと思う。

「短歌」について、不思議に思うことのひとつは、なぜこの三つの歌を覚えてしまったのかということだ。
それほどの傑作とも思えない。
心を揺さぶられるようなことを歌っているわけではない。

「箱根路を」の歌なんか、誰にも作れそうに思う。

実朝が、馬に乗って箱根の山道をのぼってきた。
ぱっと視界が開けて海が見えた。
沖の小島には、波が寄せては返ししている。

供の者に、「あれはなんという海か」と尋ねたら、「伊豆の海と申します」と答えたのでよんだ歌だそうだ。

こうとしかよめないのではなかろうか。
箱根の山道を馬でのぼってきて、同じように伊豆の海を見た人は大勢いるはずだ。
そのうちの百人くらい、こうよんでもよさそうに思う。
ない智恵をしぼってみたが、他のよみかたはなさそうに思う。

作者、源実朝その他大勢。

そうではないというのが不思議である。
しぶしぶではあるが、傑作と認めざるを得ない。