整骨院に行く。
朝8時前に家を出た。
駅前で、県会議員のTさんが演説をしていた。
二ヶ月ぶりだ。
なつかしい。
通勤していた時は、いつも7時過ぎに、Tさんの姿を見た。
約十年、毎週一度、暑い日も寒い日も雨の日も風の日も、一時間以上、この場所で、「ごあいさつ」していることになる。
えらいといえばえらい。
えらくないといえばえらくないのか。
えらくないといってもえらい!と言い切る気もしないが、えらくないといえばえらくないな、と突き放す気にもなれない。
駅前のTさん。
やっかいな人だ。
私が、どう処遇したものか、頭を悩ませ、苦慮しているのも知らぬ気に、Tさんは、これまでどおり、笑顔を振りまくわけでもなく、淡々と、己の思うところ、変わらぬ心情を、披露していた。
「早朝からの、御出勤、また御通学、まことにご苦労さまでございます。わたくし、心からの敬意を表する次第でございます。そして、また、皆様方が、一日のお仕事、御勉学を終えられまして、無事ここ学園前に、戻られますことを、心よりお祈り申し上げます」
いつもながら、ごていねいといえばごていねいである。
なんかおかしいといえばおかしい。
ごていねいだけれど、なんかおかしい、といえばいいのかもしれない。
たぶん、何もいわなくていいのだろう。
整骨院から帰って、家にいると、二時半ごろ、S君から電話がかかった。
いろえんぴつ画講座の最終回だという。
え〜っ!
毎週木曜日だと思い込んでいた。
最終回だけ月曜だった。
最終回は、「人物を描く」だったので、楽しみにしていたのに。
がっかりだといったら、S君もがっかりだという。
そうでしょうな。
生徒が、ふつうのおじさんおばさんばかりだと、教えがいがないだろう。
私のような、美術的才能あふれる生徒が一人でもいれば、張り合いがある、と思ったらそうではなかった。
彼は、毎回講座が終わって、私と喫茶店で甘いものを食べるのを楽しみにしていたのだ。
彼は甘いもの好きだ。
私は、コーヒーを飲むだけだが、彼は、「なんとかパフェ」とか、いろいろややこしいものを食べる。
今日は、私といっしょに、あんみつを食べようと決めていたそうだ。
朝から、あんみつのことばかり考えていたのに、と残念がっていた。