昨日の朝、家内の知り合いがやってきた。
この女性は、消費者運動のようなことをしている。
地域の商店を大事にしなければいけないといって、買い物は出来るだけ地元の個人商店を利用するという、意識の高い消費者である。
最近車を買ったという。
「毎月、ガソリン15リットルだけ乗るの」
「?かわった乗り方ね」
「Co2よ、Co2!ガソリンが一番悪いのよ!」
Co2を排出しながら力説していた。
午後、念願の「S君個人指導自画像の描き方」。
元天才少年、うますぎて東京芸大二浪合格、現大学教授、美術教育一筋40年という、自他共に許す、かどうかは知らんが、少なくとも「自」は許す関西最強の指導者だ。
「どんなへたっぴーでもうまくしてみせる!」と豪語するだけのことはありますよ。
彼が教える学生たちの、「これが一枚目の石膏デッサン」「これが二枚目の油絵」というのを見せられると、「先生!よろしくお願いします!」とすがりたくなる。
だいぶ彼が手伝ってるのじゃないかという疑問は残るのであるが。
「お手本」を見せるから、真似してみなさいと、マンツーマン指導である。
まず、木炭でデッサン。
キャンバスをたて、鏡をにらみながら、S君が木炭を走らせると、30秒ほどで、顔らしきものが浮かび上がってくる。
どんどん黒くなっていったと思うと、今度は消していって完了。
「やってみ!」
私がすわって、鏡を見ながら描きはじめるのを、S君はじーっと観察していた。
「う〜ん・・・首、曲げてみ」
「?」
「首、こんなふうに、ちょっと曲げてみ」
「??」
「ちょっと首をかたむけたほうがキミらしさが出るわ」
「?????(>_<)」
納得できないまま、関西最強の指導者の言葉におとなしく従って、私は、かっくんと首をかたむけた。
「次は色」
S君は、とんでもなく太い筆で描き始めた。
顔も髪の毛もお構いなく、茶色とか緑とか、大雑把にベタベタ塗っていく。
「野獣派」「表現主義」という感じだ。
こんな描き方で、ふつうの写実的自画像ができるのだろうか。
「できる!」と、S君は断言するのであるが。
「胸に厚みがないな。『胸には厚みがある!』という思いを込めて描いてみ。思いを絵にするんや!」
胸には厚みがあると思いながら描いたら、厚みが描けた。
だまされているような気がする。