人物画を描こうとしている。
人物画と肖像画はどうちがうのか。
だいたいわかるような気がする。
昔、NHK教育テレビで、「水彩画教室」があった。
先生は、人気画家絹谷幸二さんだった。
生徒が二人だったか。
女性モデルを描いた。
アナウンサーが、では生徒さんの作品を見てみましょう、といった。
それぞれにがんばって描いていた。
「それでは、先生の作品を」
うわっ!
なんじゃこれは!?
まる、ぺけ、さんかく、赤、青、緑。
先生は、「私が描くと、こうなるんですネ」とすましていた。
人物画の方が、幅が広いことは確かだ。
新聞などで、「肖像画製作会社」の広告を見かける。
「金婚式記念、受賞記念にどうぞ」
インターネットで調べたら、結構あるんですな。
「ビーナスがライバル!」
若い日のヌードを油絵で残しませんか、というのである。
ライバル視されては、ビーナスが怒りますよ。
受賞記念の一例として、錦鯉といっしょに描いてもらった人の絵が出ていた。
この人は、飼っていた錦鯉が、品評会で入賞したのだ。
それで、錦鯉とならんで肖像画を描いてもらった。
どうせなら、池でいっしょに泳いでいるところがよかったと思うが、ただならんでいるだけである。
馬の肖像を描いてる人もいる。
その人の「肖像画ギャラリー」は、三つに分かれてる。
「馬」「人物」「僧侶」
馬がいちばんうまかった、などということはいくら私でもいえない。
肖像画家を目指している人もいる。
この人は、人物画の勉強のため、インターネットのポルノ画像を見て描いていたら、奥さんに怒られた。
「それなら、ヌードモデルを連れてきてくれるのか!」と奥さんにくってかかっている。
奥さんが女性客を連れてきた。
その客の注文が変わっている。
「自家用車の後部座席に、主人と愛犬が座っていて、その車が空を飛んでいるところを描いてほしい」
そんな漫画みたいな絵が描けるか!と激怒したが、穏便に、「そういう絵柄では、顔が小さすぎて肖像画になりません」と断った。
カナダの画家が、遺体を焼いた灰で肖像画を描くビジネスをはじめたそうだ。
故人の在りし日の姿を偲ばせる、生き生きした感じが好評とのことである。