「私は伯母を憎んだ」と自伝に書いたのは、アメリカの伝記作家キャサリン・ドリンカー・ボウェンで、憎まれたのはアメリカを代表する女流画家セシリア・ボーです。
セシリア・ボーの画集を読んでいて知りました。
セシリア・ボーは、明治時代に活躍した画家で、とくに肖像画で有名だった。
日本名なら上村松園とか小倉遊亀クラスで文化勲章まちがいなしという人です。
私も、肖像画家の端くれですので、参考のために画集を買いました。
当時から、「アメリカ史上最高の女流画家」とたたえられていた。
「アメリカ史上」といっても、100年ほどだけど。
アメリカの超エリートたちから肖像画の依頼が殺到した。
大統領も描いてます。
その大画家が、なぜ姪から憎まれることになったのか。
セシリア・ボーは、結婚せず子供もいなかった。
甥や姪の肖像をよく描いた。
キャサリンの家を訪れて、キャサリンの兄弟や妹の絵を何度も描いたけど、キャサリンだけは描いてもらったことがなかった。
幼いキャサリンにはその理由がわかっていた。
「伯母は、我が家を訪れると、よく絵の話をした」
骨格の話、人体比率の話。
目と目の間、耳と耳の間、眉毛と目の間、額のかたち。
美しい顔、美しいからだとはどういうものか。
その話を聞いていると、キャサリンは、自分は絵に描いてもらえるような顔じゃないのだとよくわかった。
そして、伯母を憎んだ。
う〜む・・・。
セシリア・ボーさん、ちょっと配慮が足らなかったのでは。
伯母は、他の女の子を話題にした。
「あの子の額は、絵に描くような額じゃないわね。あの額は、ブリンマー(名門女子大)に行って、本を書くような額よ」
これを聞いたときも、カッチ〜〜ン!ときた。
その屈辱をばねに、キャサリンは猛勉強したから伝記作家になったのかどうかは知りませんが、まあ、一流の作家になって、ウキペディアで写真を見ることができる。
う〜む、絵に描きにくい骨格と言えるかもしれない。
が、子供の時はかわいかったかもしれない。
しかし、セシリア・ボーは、「骨格は死ぬまで変わらない」と言ったそうで、それもキャサリンちゃんを苦しめることになったんです。
やっぱり、伯母さんが悪いな。