人物画教室。
三人目のモデルさんである。
見た瞬間、お、描きやすそう、と感じた。
こういう人が、私の「タイプ」というのだろうか、と思ったのであるが、他の人の絵を見たら、今回は、皆さん、顔がうまく描けている。
描きやすい顔というのがあるようだ。
教室に行ったら、先に来ていた先輩女性たちに、仕事は何をしていたのかと聞かれた。
先日は、トシを聞かれ、今度は仕事。
まあ、そういう順番でしょう。
私のことを、30代後半、などと言った人がいるということで、ここの先輩たちには非常な好感を持っている。
しかし、まあ、いくらなんでも「30代後半」はないですね。
何年人物画教室に通っているのだろうか。
デッサン力云々以前の問題である。
目を何とかしなさいと言いたい。
これまでに、私のことを、「先生でしょう」と言った人が何人かある。
そのうちの一人は、中学の先生だった。
本格的な、「一見教師風」と言えるかもしれない。
詐欺をするなら、先生に成りすますのが手っ取り早そうだ。
「さあ、何に見えますか」
「なんでしょうね」
「ちょっと、あたりませんよ」
「え〜、そうなんですか」
「大相撲の行司してたんです」
「え、ええ〜っ!」
「去年の名古屋場所で引退したんですが、式守勘太夫と言います」
全員、眼をまん丸にして私を見ていた。
私が、キンキラキンの装束を身につけ、頭に烏帽子を乗せて、軍配片手に、ハッケヨイヤと声をあげている姿を、思い描こうと苦心しているようだ。
「ほんとですか」
「うそですよ」
「えーかげんにしなさいっ!」
絵を描いていたら、先ほどの女性がやってきた。
かなりのふっくらさんである。
「行司さん、どうですか」
「まあ、なんとか。横綱は調子どうですか」
「誰が横綱じゃ!?えーかげんにしなさいっ!」
「ほんとにネッ!」