若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

これからは漁業だ

「漁業」というと、「マグロはえなわ漁」とか「カツオ投げなわ漁」とかを思い起こすが、「フナ漁」というのもある。

昨日テレビを見ていたら、近江八幡で、フナをとっている老人が紹介されていた。
水辺に生えるヨシの根元に、わなを沈めておいて、入ったフナを捕まえる。

わなは、竹製で、円筒形のカゴみたいなものだ。
これを、一人で二百だったか四百だったか、とにかく大量に、あちこちに沈める。

おじいさんは、朝早くから舟をこいで、わなを見てまわる。
フナが入っていないと、置き方を変える。
フナと人との知恵比べである。

午前中かけて見てまわる。
自分の仕掛けたわなに、フナが入っているかどうか。

「おもしろいなあ〜。70年やっとるけど、今が一番おもしろい。金もうけが半分、おもしろいのが半分やな」

この日は、大漁で、一万五千円ほどになったようだ。
フナの中でも、近江名物「ふなずし」の材料になる、「ニゴロブナ」は、キロ7000円もする。

昼からは、毎日わなを作る。
水につけっぱなしなので、わなは次々にだめになっていくのだ。

裏山でとった竹を、庭で細く切る。
縁側にすわって、組み立てる。
複雑な仕組みだから、日に二個が限度だ。

この組み立て作業がまたおもしろいという。
インタビューに答えながら、手は動き続ける。
何十年もやっているから、自然に動く。
精巧で美しい民芸品のようなわなができあがる。

わなを作るのがおもしろくて、フナを捕まえるのもおもしろい。
おじいさんは幸せである。

小学校二年生のころ、父親に教えられてというから、約70年。
ずっとおもしろかったわけではないだろう、と邪推する。

70年の間、うまずたゆまず続けてきて、やっとすべてがおもしろいといえる境地に達したというか、境遇になったというか、人生のごほうびみたいなもんでしょう。

ふつうのお勤め、お仕事、お商売では、こうはいきませんよ。
80歳になって、一人マイペースでできることは、そうはありません。

二日続けて、最近まれな幸せなお年寄りを知り、これからは、農業か、フナ漁か、迷うところである。