若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

極楽とは

西方極楽浄土というと、極めて楽なところというイメージが強いと思う。

まあ、帰ってきた酔っ払いみたいに、「♪天国良いとこ一度はおいで 酒はうまいしねーちゃんはきれい」というほど程度の低いことを考える人は少ないだろうが、それに近い状況を思い浮かべる人は多いだろう。

しかし、天国といい、極楽といい、人によってイメージがちがってくるのは当然だ。

酒飲み放題が極楽と思う人もいれば、酒のない国に行きたいと思う人もいる。
極楽浄土くらい、自由にタバコを吸わせてほしいと思う人もいあるし、いや、極楽浄土内は全域終日禁煙にしてほしいと思う人もいる。

その人のレベルによって、「極楽」もいろいろだ。

速水侑『源信

恵心僧都源信にとって、極楽浄土とはどんな場所だったのか。

仏菩薩に出会うことができ、何物にも妨げられず、仏道修行一筋に打ち込める場所だった。

酒もねーちゃんもなし。
もちろん禁煙。

世間的欲望を捨て去った求道僧源信にとって、極楽とは、大学の研究室プラス実験室、図書館、剣道場、柔道場、断食道場、まあ、総合研修センターみたいな場所だった。
NASAの訓練センターみたいなところと言ってもいいかもしれない。

普通の人にとって、「極めて楽」という感じの場所ではない。

源信が、そんなところに行きたいと願ったのにはワケがある。
彼は、比叡山延暦寺で修行していたのだが、当時の延暦寺のお坊さんたちは、派閥抗争はするは、時の有力者と結びついてうまい汁を吸おうとするし、ファッションとグルメに熱を上げるちょいワルボーズたちが肩で風を切る勢いで、まじめな源信は逃げ出したかった。

逃げ出して、心静かに修行に励めるところに行きたかった。
源信は、自分ひとりが往生できればいいなどとは思っていなかった。
自分が往生できたら、残った人達を連れに来るつもりだった。

「さあ、ついていらっしゃい。私といっしょに修行に励みましょう。何もないとこですが、修行だけは思う存分できますよ」

「極楽=うまい酒+きれいなねーちゃん」と思いこんでる人は、源信に連れて行かれて、詐欺だと怒り出すかもしれない。

しかし、源信は、大変な人気だった。
「うまい酒+ねーちゃん」はこの世で楽しんで、あっちでは修行に励もうと考えていた人が多かったのだろう。