若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

同総会2

同総会では、懐かしさがこみ上げるような場面はなかった。

「こんなことあったなあ」
「あったあった!」

「ふたりでこんなことしたよなあ」
「そうそう!」

これでこそ盛り上がるが、そうはならない。

「こんなことあったなあ」
「おぼえてない」

「こんなことしたなあ」
「忘れた」

「おぼえてない」「忘れた」の連発である。
おぼえてない、忘れたと言い合うために集まったような感じだ。
話のかみ合わなさに、母が入居していた要介護老人施設を思い出した。

私と同じ学年のN君が、やはり同じ学年のH君を指して、「あれ、誰?」と聞いたのには驚いた。
「Hだよ」と言ったら、「全然記憶にない」と言う。
二人は、共に長野出身だ。
最後まで思い出せないようだった。
だいじょうぶかな。

N君以上というか、以下というべきか、あきれたのは二年先輩のAさんだ。
Aさんは、バンドのドラマーとしても活躍していた。
かなり大きなコンテストで入賞したバンドで、大学祭などでは人気であった。

バンドの話を聞いたが、大学外でも引っ張りだこだったようだ。
練習はどこでしていたのかと聞いたら、Aさんの自宅が多かったそうだ。

「自宅でバンド練習ですか。ドラムもアンプも使って?」
「そうだよ」
「近所迷惑ですね」
「お蔭で今でもお隣さんとはギクシャクしてますよ」

四十数年前のバンド練習が、いまだに尾を引いているのか。
しみじみしますね。

Aさんが、テーブルに置かれた古い集合写真を見て首をひねっている。
展覧会や飲み会のとき写した写真だ。
名前が浮かばないようだ。

「これ、誰?」
「Sですね」
「あー、S君か。これは?」
「Kさんです」
「あー彼女ね」

「これは誰?」
次にAさんが指差した人物を見て、私は、ふざけてるのだと思ってAさんの顔をじっと見た。
Aさんは真顔だった。

黙っている私を見上げて、「これ、誰?」

「・・・Aさんですよ」
「オレ?!?!?!」

Aさんは、素っ頓狂な声を上げた。

「・・・これ・・・オレじゃないよ!」
「い、いや、Aさんです」
「ええ〜〜っ!これ、オレ?!?!?!・・・」

これがホントの我を忘れて茫然自失ですね。