千原ジュニアというのは、兄弟お笑いコンビ「千原兄弟」の弟の方です。
「千原兄弟」は知ってますよ。
十数年前でしょうか、娘達が、若手お笑い芸人の出る番組をよく見ていて、そこに彼らが出てました。
きつい顔の人だったように思う。
この本は、息子の本棚にあった。
息子の読む本は、漫画も含めて、面白くないというか、わけがわからん本が多い。
漫画でいうと、娘達からは、『ちびまる子ちゃん』とか『伝染るんです』『動物のお医者さん』など面白いのを教えてもらったが、息子が推薦したのは、『浦安鉄筋家族』とか『緑のマキバオー』とか、「こ、こんなのを面白がってるのか・・・トホホ」という感じのが多かった。
で、千原ジュニアの『3月30日』ですが、帯に、「『14歳』に続く自伝的小説!神様、僕を殺しかけてくれてありがとう。挫折、失恋そして・・・・。二度の死の危機の先に見たものは?」と書いてあるので、面白くなさそうな気がしたけど、面白かった。
一気に30分ほどで読めたけれど、スカスカ感はない。
「スケッチ」という感じの文章で、簡潔でわかりやすい。
この人はイラストもうまいです。
千原弟は、有名中学に合格したが、なじめず引きこもりになる。
千原兄は、お笑い芸人を目指して養成所にいたが、弟にコンビを組もうと声をかける。
15歳で、お笑いの世界に飛び込むが、受けない。
オレの目指す笑いがわからんやつはアホじゃ!的勢いで突き進むが受けない。
もうあかん、と思いかけた頃、受けるようになり、それなりに売れて、念願の東京進出を果たすが、東京では受けない。
そんなある日、バイクで事故を起こし、意識を失い四日目で気がつくと、3月30日、27回目の誕生日だった。
顔面ぐしゃぐしゃ、パイプにつながれた彼を、先輩達が見舞ってくれる。
バイク雑誌を手渡して、「またな〜」と出て行くようなイキな先輩もいる。
病室に、明るさと笑いが持ち込まれる。
絶望のどん底で、千原ジュニアは、「今までの僕は、まちがってたんじゃないかな」と思う。
一気に「相田みつを的世界」に行ってしまいそうだが、あくまで「自省的」なので、そんなヘンなことにはならない。
昔の彼らを知らないし、生まれ変わった姿に期待するわけじゃないけど、今の千原兄弟を見たいような気がするから、うまく書けてると思う。