タレントの、「のりピー」こと酒井法子容疑者が逮捕されたと聞いたとき、エーッ!と驚かなかった。
「のりピー」か、・・・と思った。
「のりピー」は知ってる。
名前だけ知ってる。
「のりピー」が、どんな人かは知らない。
何を歌ったとか、何を演じたとか、まったく知らない。
顔も知らない。
「のりピー」だけ知ってる。
「有名」という言葉にぴったりだ。
昔、アメリカの「ひねくれ辞典」に、「有名人」の定義が出てた。
有名人=有名であることで知られている人
私にとって、「のりピー」は、典型的有名人だ。
町で見かけても気づかない。
つかつかと私に近づいて、「わたくし、のりピーと申します」とあいさつされても、「そ、そうなんですか」とあせるだけだ。
女優の大原麗子さんが亡くなった。
大原さんは、顔も知ってるし、声も知ってる。
私にとって、大原さんは、「声の悪い人」という印象だ。
大原さんの死を伝えるニュースでは、「独特の低音で親しまれた」とか「独特のハスキーボイスで人気の」とかいってた。
うまいこといいますね。
もし、Y森さんが亡くなったら、「独特のリズム感で親しまれた」と書くことにしよう。
何の話か。
大原さんじゃなかった、のりピーだ。
のりピー失踪から逮捕に至る報道はものすごかった。
のりピーについて、いろんなことを知った。
国民的アイドルだったことを初めて知った。
私は、非国民だったのか、と反省した。
結婚して子供ができてからも、人気が衰えなかったことも初めて知ったし、私生活についても初めて知った。
こういうことを知らずに、「のりピー」を知ってた。
だから、「のりピー失踪」と聞いて、「ああ、あののりピーか」と思った。
「のりパー失踪」なら、誰やねん、と思うだけだ。
「のりプー」でも「のりペー」でも「のりポー」でもいっしょだ。
「のりピー」にだけ、安心して反応する。
知ってる、というのはすごい。
以前、大きな病院の婦長さんが、入院中の老婦人のことを書いてた。
生きててもしかたない、死にたい、そんなことばかり言う。
ある日、田中真紀子さんが視察に来た。
それ以来、老婦人は大変元気になった。
あんな有名な人に会えてよかったというのだ。
知ってる、というのはすごい。
婦長さんは、有名な方はその力を自覚してほしいと訴えてた。