きのうは、高校時代の友人達と飲んだ。
男七人と女二人。
幹事役のF君から電話があったとき、彼の息子のところに初孫誕生と、うれしそうな声で告げた。
女の子とのことであった。
F君は子煩悩である。
子供ができたのが遅くて、下の娘さんは、まだ高校生か大学生だ。
その娘さんが小学生のころは、彼女の写真を持ち歩いていて、飲み屋で見せられたことがある。
目の中に入れても痛くない!という気合が発散していた。
そんなF君だから、初孫誕生となると、これはもう大変ですよ。
写真だけではすみそうにない。
アルバムを持ってくるんじゃなかろうか、いや、ビデオ鑑賞会か。
そんな心配をした私は、時代遅れでした。
会場の蕎麦屋の席に着くやいなや、F君が取り出したのは、ケータイでした。
にやけきったF君が差し出したケータイを見て、なるほど、今はコレですかと納得した私であったが、事態は意外な方向に展開したのであった。
一通り皆が見終わると、A君がおもむろにケータイを取り出して、「これ、ウチの二番目の孫」。
それを見たB君も、ケータイを出して、「これ、ウチの四番目の孫」、C君は、「ウチの三番目がコレ」、Dさんは、「ウチの五番目、可愛いでしょ。ちょっと待ってね、上から順に行くわね・・・」「あ、それやったら、これ、ウチの上の子の七五三」「七五三の写真はないけど、一番下の子のお遊戯会の動画があるんや」
ボーゼンとするF君を尻目に、ケータイ孫自慢というか、孫合戦というか、大乱戦、大混戦になってしまった。
しょんぼりしたF君は、盛り上がる皆に背を向けて、唯一ケータイを持ってない私に話しかけた。
孫は八月七日に生まれたので、名前を「キミとこと同じ、はなちゃん」にするよう提案したというのだ。
いいんじゃないでしょうか。
ところが、家族全員の猛反対を受けたという。
なぜだ。
F君の家の近くに、アタマのおかしいおばあさんがいた。
近所をウロウロ歩き回っては、道行く人に「百円ちょうだい」とねだるので有名だった。
先日、車にはねられて死んでしまった。
ここまで聞けば、オチがわかりますよね。
そうです。
その、アタマのおかしいおばあさんの名前が、「はな」というのであった。
そら、反対するわ。
それにしても、F君に聞きたい。
なぜ私にそんな話を聞かせるのだ。