伊藤廉著『絵の話』『油絵のみかた』『デッサンのすすめ』を買いました。
「イッキ描きブログ」で、「画学生には最適かも」と書いてあったのでイッキ買いしました。
三冊とも知ってましたが、著者が東京芸大教授だった昔の人ということで、おもしろくなさそうだと思ってたんです。
「イッキ描きブログ」のご主人は、東京芸大が嫌いだと思ってたんですが、その人がすすめてるなら読む価値ありでしょう。
で、『絵の話』。
序文を安井曾太郎が書いてます。
序文によれば、「絵の話」というのは、戦後すぐ「少國民新聞」に連載されたものらしい。
こ、子供向けの本なのか。(-_-;)
序文の日付は、昭和21年8月。
私が生まれた年ですがな。
日本は丸焼けですよ。
そんな時に、子供向けの『絵の話』なんか出版して売れたのかと心配した私はかなりの愚か者です。
著者あとがきによれば、新聞連載をまとめて22年11月に出た、紙も写真版も質の悪かった初版5000部はたちまち売り切れ、再版8000部もあっという間に売りつくし、翌年3月には第三版が5000部、その後も売れに売れ続け、昭和25年には第八版が出たというのですから大ヒットです。
それに気をよくした出版社が柳の下のドジョウを狙って昭和24年書下ろしの『絵の話その二』を出版すると、これも初版一万部はたちまち完売、翌年にまた一万部と、連続ヒットになったのでした。
それに気をよくした出版社が柳の下の三匹目のドジョウを狙う間もあらばこそ、三匹目のドジョウを横取りしよう朝日新聞が襲いかかり、『絵の話その三』を出したことは書いてあるが数字は書いてないから、さすがに三匹目のドジョウは小さかったのかもしれません。
日本丸焼けの時代だからこそ、子供向けの『絵の話』が大ヒットしたんでしょうか。
『その三』が出たころ、著者は生死の境をさまよう大病を患い二年間入院したが、その時の費用は『絵の話』のおかげで大変助かったと書いてあります。
『絵の話』の一から三までをまとめたのが、今回買った新装版です。
新装版も、1992年に第5刷が出てます。
時代を感じる本です。
古いというのじゃなく、時代の空気を感じる本です。
焼け跡に立った著者が、子供たちに向かって、「さあ、みんな!元気よく、明るく、まじめに生きていこう!」と呼びかけているような本です。
名著だと思いました。