私は、自分では「肖像画」を描いてると思ってます。
似てなければいけないと思ってました。
美術予備校の先生が、「肖像画は似てなくていい」と言ったのには目からウロコでした。
モデルが喜べばいい。
そうかもしれない。
「特徴は描かないほうがいい」とも言われました。
本人が気にしてる場合が多い。
そうかもしれない。
特徴を誇張するのが漫画ですね。
私は、何も考えずに描いてたので今さらの目からウロコだったのですが、こういうことは古来問題になってたんですな。
19世紀フランス絵画の巨匠アングルに関する本を読んでます。
巨匠中の巨匠だから、上流階級の奥様お嬢様方の肖像画を頼まれる。
巨匠アングルも、上流階級の奥様お嬢様方には手を焼いたそうです。
じっとしてくれない。
いくら巨匠でも、上流夫人から見れば単なる絵描きだったんでしょう。
ポーズの合間に化粧を直したりする。
さっきとメークが変わるのはまだしも、髪型まで変えるので困ったようです。
上流夫人たちにはよほど腹が立ったんでしょう。
アングルは、「あの人たちに、『5フランやるからじっとしてろ!』と言えたらどんなにすっとするだろう」とぼやいたそうです。
職業モデルは、日給5フラン程度だったようです。
じっとしてないくらいはマシなほうですよ。
モワテシエ夫人という人は、巨匠アングルに描きなおさせてます。
自分の肖像の目と目のあいだが広すぎるというんです。
しぶしぶ描きなおした巨匠アングルの心境は・・・。
この人は、アングルに二枚描いてもらってます。
一枚目の時も、腕が太すぎると不満に思ってた。
二枚目も太いので、文句を言って描きなおさせてたそうです。
描きなおしてこれかいな、と思える太さです。
腕が太すぎると言われたときは、さすがのアングルも口をアングルとあけたそうです。