演出家の蜷川幸雄さんが亡くなりました。
人間のアタマというのはおかしなもので、というより、私のアタマはおかしなものでといったほうがいいのかな。
蜷川さんについて、強烈な印象があるんです。
今ネットで調べたら、それは、1965年のNHKの連続テレビドラマでのことであった。
そのドラマに、さえない男が出てた。
ウジウジしたさえない男であった。
徹底的にウジウジしてた。
見るのもいやであった。
その俳優の名前なんかおぼえてないんですが、ドラマの中で奥さんにビシ〜ッ!と言われる場面はおぼえてるんです。
「あんたのそのウジウジしたとこが嫌いなのよ!」みたいなセリフでした。
その時の、男のウジウジした顔もおぼえてる。
そのドラマのあと、男の顔は見ることがなかったので、売れない俳優として消えて行ったんだと思ってました。
ところが、それから20年後くらいでしょうか、その男の写真が新聞に出てたんです。
世界中で評判の演出家蜷川幸雄だというんです。
???
あの、ウジウジしたさえない男が、世界的演出家?
テレビで特集もしてました。
舞台稽古風景を見てびっくりしました。
あのウジウジしたさえない男が、俳優たちに向かって怒鳴りまくってるんです。
どんなに評判になろうとどんな賞をもらおうと、私のアタマの中では、蜷川さんは、「あのウジウジしたさえない男」という汚名を引きずっているのであった。
人間のアタマ、じゃなかった私のアタマがおかしいのか、蜷川さんの演技が素晴らしかったのか。
蜷川さんの演技が素晴らしかったのなら俳優を続けてるだろうから、やっぱり私のアタマがおかしい。