若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

消えたさいふ

15世紀の画家ヤン・ファン・アイク関係の本を読んでます。

すごい人だと思います。
上手です。
ウデがいいだけじゃなくて、いい絵具を作ったり、いい筆、いい油を作るのにもがんばった人だろうと思います。

「宰相ロランの聖母」という絵があります。

絵の題名も知らなくて、この絵の男性はえらいお坊さんだと思ってました。
15世紀のブルゴーニュ侯国で長年にわたって権勢をふるったニコラ・ロランという人だそうです。

ものすごいやり手でものすごい財産を築いたそうです。

その人が、自分の家に聖母子を呼んで「ざんげ」してるとこだそうです。

聖母子に向かって「ざんげ」とはすごい!と思うのは素人の浅はかさで、当時「ざんげ」はファッショナブルだったようです。

「ざんげ」関係の本もたくさん出た。

「ざんげ入門」「ざんげのマナー」「恥をかかないざんげ」「らくちん!ざんげ」「現世も来世もざんげでハッピー!」

この絵の中には、「大罪」がいくつも描かれてるんです。

「嫉妬」とか「多情」とか。

「貪欲」は描かれてない。

宰相ロランは、自分の財産などささやかなもんで、つつましい人間だと思ってたみたい。

さて、現代の技術で「赤外線撮影」というのがあります。
今見える絵の具の下にあるものまで見ることができる。

それでこの絵を見ると、宰相ロランの腰に「さいふ」がぶら下がってるんです。
一度描いたそのさいふを消してある。

ロランの大金持ちぶりをアピールするため、ファン・アイクが、金貨がぎっしり詰まったさいふを描いた。

それを見たロランが、「う〜ん、ちょっとまずいんじゃね〜の」と思ったんでしょう。

なにしろ、イエス様とマリア様の前でひざまずいてざんげですからね。
さいふブラブラ金貨ジャラジャラはぐあい悪い。

で、消させた。
案外気が弱いとこもあったんですね。