チャイムが鳴ったので出ると、自治会の29年度班長だったAさんでした。
ろうあの男性で、トシは私と同じくらいです。
私が28年度会長として、Aさんのための手話通訳の手配をしたということもあってか、私がAさんの担当みたいな形になってました。
初対面から好感を持ちました。
近所の方たちの話でも、非常に積極的ないい方とのことでした。
ちょっと、あわて者という感じはしましたが。
そのAさんが、任期が終わった今、何の用事かと思いました。
いつものように筆談用の紙とペンを取り出して、サラサラ書いて見せました。
「ゴミの話です」と書いてあったので、ああ、あのことかと思いました。
去年の12月の班長会で、Aさんが、「ゴミ出しのことで誤解されて困ってる」と訴えたんです。
封書が届いて、Aさんがゴミ出しルールを守らないと非難してあったそうです。
Aさんは、自分はきちんと守っていると訴えました。
ご近所の方も、Aさんはきちんと守っていると発言しました。
その件で進展があったようです。
Aさんの話では、ご近所のBさんが訪ねてきて、大変な剣幕でAさんを非難したそうです。
「自分は、あんたがしたことの一部始終を見ていた。今後二度とあんなことはしないと約束しろ」と迫ったそうです。
どう説明しても納得してもらえず、あきらめて、「二度としません」ということになってしまったそうです。
私が驚いたのは、そのBさんは、私が知ってる方なんです。
温厚な高齢の紳士です。
あのBさんが、激しく非難したり迫ったりすることがあるのか。
Aさんは、いつも持ち歩いている紙に、次々に書きました。
「とても悲しいです」
「これまでも、ろうあであるために誤解を受けたことは何度もあります」
「今回の誤解の原因は、Bさんの高齢ゆえの強い思い込みもあるかも知れません」
「若草さんに聞いてほしくて来ました」
何ができるか、考えてみます。