若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

告別式悪夢の失言に続き、一周忌ロマン派詩人

(きのうの続き)
 その社長の一周忌が、社員ならびに関係者一同を集めて、大きなお寺でとり行われた。

 本堂での法要のあと、席を変えて「偲ぶ会」
まず二人の方が挨拶された。どちらも、こういう場にふさわしい、ごく普通に社長を偲ぶ言葉。
 次に立ったのは、年は、64、5、背の低い太った、頭の禿げ上がった男性であった。私の隣の社員さんに聞くと、得意先の社長ということでした。

 その人が演壇に立った時、私は、何か「異」なものを感じた。
「普通じゃない!」と思ったのです。演壇に立って、会場を見渡す視線が普通じゃない。挑戦的というか、挑発的というか、不敵な笑みを浮かべる寸前、という感じなのである。なかなかしゃべらないのである。じらしているのである。

 会場の注意を十二分に引きつけておいて、彼は口を開いた。
「わたくし、亡き社長に、詩をささげたいと思います」
私は思わずのけぞった。
そーか!そーだったのか!詩人だったのか!
普通じゃないと思った私のカンは当たっていたのだ。

 会社の社長の一周忌に、詩をささげるなんて、ちょっとできませんよ。
挨拶のはじめに、自作の俳句か短歌を入れるというのならわかりますが。

 彼は、ますます挑戦的に、いよいよ挑発的に、そしていまやはっきりと不敵な笑みを浮かべて会場を見渡した。
「どーじゃ!恐れ入ったか平民ども!」という感じであった。

 出席者が恐れ入っていることを確認してから、彼は動いた!
サッと両手を斜め上に上げた!時計の針で言えば、左手が一時、右手が二時の方向。そして、彼は手の方を見上げた。

 またも私はのけぞった。
天国を見上げているのだな、と思った。
またも私のカンは当たった。
彼は叫んだ。
「あ〜!天国の○○さん!」

 私は三度のけぞった。
いきなり叫ぶとは思わんかったな〜。

 彼は詩を朗読した、と思う。よ〜わからんのであるが。
最後はこうであった。
「見守り給え、○○(社名)の弥栄を!○○の弥栄を!」
リフレインである。「畳句」というのである。技巧派である。
「弥栄」は「いやさか」と読むのである。「ますます栄える」という意味である。

 私は、彼が「弥栄」というような「雅語」を使うとは思わなかった。
「いやさかさっさほいさっさ」と踊りだすところは想像できるのであるが。

想像力の貧困である。遺憾である。