車に乗って交差点で信号待ち。
工場や商店、倉庫などが建ち並んだごみごみした交差点だ。
そのうちの倉庫とも民家ともつかぬ小さな建物の壁が、どぎつい黄色のペンキで全面塗りつぶしてある。
そして、これまたどぎつい赤いペンキで字が書いてある。
最上段にでかでかと
「不老長寿の会」
怪しそうな会だが、ひょっとすると太極拳のグループかもしれない。
怪しい会か楽しい会か判断を保留する。
二行目は少し小さな文字で
「不老長寿は世界一貴重な価値があります」
思わず「そうだ!」と叫びたくなるが、「世界一」は少しヘンだな、と思う。
しかし、怪しい会だと断定するほどではない。
怪しいと言うより、この会は、徐福に命じて東方海上の島に不老不死の霊薬を求めさせたと言う秦の始皇帝を初代会長とする由緒正しき会かもしれない。
三行目。
「特別企画 1人100万円で不老長寿伝授」
一気に怪しくなってしまったではないか。
申し込む人がいるかもしれない。
公私共にご多忙とは思うが、国民の生命財産を守るため、福田官房長官にこの広告の前で記者会見をしてもらいたい。
「え?なんですか?100万円で不老長寿?
フン!ま、世の中、色々な考えの方もあろうかとは思いますが、ここは一つ、自己責任の原則と言う重みを考えた上で、行動していただきたいと思いますネ」
三行目だけでも十分怪しいのであるが、問題は四行目だ。
「プロ野球入団希望者募集」
こ、これは・・・・?(汗)
怪しいとか怪しくないとか自己責任とかいうレベルの議論をはるかに突き抜けてしまったではないか。
この飛躍に私はついていくことができなかった。
「不老長寿の会」はいったいどうなっているのか。
すがるような思いで五行目を読んだ。
「演歌歌手希望者募集」
完全にお手上げだ。
「特別企画」でお一人様100万円で不老長寿を伝授するかたわら、プロ野球入団希望者や演歌歌手希望者を募集するとは。
負けました。
最後に、携帯電話の番号が書いてあった。
結論として、この会は楽しい会だと思う。
ただし、入会はあくまで自己責任の原理に基づいて行うべきだ。
そして、私は、この「不老長寿の会」の会長は、不老長寿とは言わないがかなり長生きすることは確かだと思う。