テレビのニュースで、ローマ法王とブッシュ大統領が並んでいた。
法王が何か読み上げていた。
ブッシュ大統領は、法王が何を言っているのかわからなくて困っているようだった。
「ローマ法王とアメリカ」という組み合わせになんとも思わない人がほとんどだろう。
二十年ほど前、ローマ法王が初めてアメリカを訪問した。
このとき、たまたまアメリカの雑誌「タイム」を読んで私は驚いた。
「タイム」はローマ法王のアメリカ訪問を特集していたのだが、想像もできないようなことが書いてあった。
「ローマ法王がアメリカを訪問できるような時代になったのか」と、感慨にふけっているような特集だった。
十年前なら、法王がアメリカに来ることはできなかっただろうというのだ。
議会で反対決議がされただろうという。
もし来ても各地で反対デモが起きて、「法王帰れ!」と罵声を浴び、卵の一つや二つぶつけられただろうとも書いてあった。
当時のアメリカでは、黒人差別反対運動などの成果で、善良な市民がおおっぴらに人種差別的発言をすることはなくなっていたが、カトリック教徒に対する差別的発言は公然と行われていたそうだ。
南部を舞台にしたアメリカ映画などに出てくる、「クー・クルックス・クラン」という団体がある。
白い頭巾をかぶり、たいまつを持って、黒人をリンチにしたりする集団だ。
私は、彼らは黒人差別主義者だと思っていた。
しかし、彼らの主張は、「アメリカから、黒人、ユダヤ人、カトリック教徒を追い出せ」というものだそうだ。
ケネディが大統領になったときも、カトリックだということが話題になっていた。
たしか田中耕太郎という人が最高裁判所の長官になった時だったと思う。
ある評論家が知り合いのアメリカ人から、「日本ではカトリック教徒でも最高裁判所の長官になれるのか」と質問されて驚いたそうだ。
他人の宗教のことなど気にすることはないから、驚いて当然だ。
江戸時代の「旅の心得」に、知らぬ土地へ行ってわけのわからん神社などがあったら、とにかく拝んでおけ、というのがあるそうだ。
それで丸くおさまるならありがたい事だ。