若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

究極の味噌汁

日本料理の精髄は味噌汁にあると言った人がある。
各地の老舗料理店の味噌汁を紹介していた。

きのう、取引先の営業マン「おかちゃん」が来た。開口一番、「Aさん、きのう死んだで」と言ったので驚いた。Aさんは、おかちゃんの五、六年先輩の営業マンだ。私より一つ上で、9月30日付で定年を向かえ、赴任地の静岡から大阪工場に戻って嘱託として勤めると聞いていた。あいさつのため9月29日に大阪工場に行き、昔馴染みの喫茶店に立ち寄って、そこで倒れて亡くなったそうだ。
脳溢血だったと言う。

Aさんが十年ほど前名古屋に転勤になるとき話をした。娘が大学生、息子は高校生なので単身赴任だと言った。大変ですね、と言うと、「いや、大阪と名古屋ですからね。家内と娘が交代で土曜か日曜に行くと言うてくれてるんで」

二年ほどして名古屋でAさんと会った。
「独身生活」を楽しんでいると言って手帳を見せた。数字がびっしり書き込んであった。パチンコの成績だそうだ。

「週末に奥さんか娘さん来られてるんですか」
「ぜんぜん!」
「え?!」
「名古屋へ来てからいっぺんも!」

そんなもんですか・・・・。
朝日新聞に読者が身近な話題を投稿する欄がある。
単身赴任の留守家庭の奥さんの投稿。ご主人は毎週日曜の決まった時間に電話をしてくる。電話が鳴ると奥さんと子供達がじゃんけんする。負けた者が電話に出るというのだ。今まで読んだ中で一番いやな話だ。

おかちゃんの話を聞きながら、Aさんのがっちりした身体を思いうかべた。
酒は飲まずタバコは少々という感じだった。二人の子供が家庭を持ってからは、奥さんと二人で暮らしていたのだから、単身生活の不摂生ということは考えられない。
それほど深い付き合いがあったわけではないが、定年退職一日前の急死ということでしみじみしてしまった。「寿命て、わからんもんやね〜」と言うと、おかちゃんもしんみりとつぶやいた。

「神の味噌汁」

か、神の味噌汁!?!?
この謎めいた言葉に私は混乱した。

吉兆の味噌汁を思い出すようなグルメではないので、永谷園の新製品かなと思いつつ、しかしなぜここで味噌汁が、とおかちゃんの気楽そうな顔を見て、ひらめいた。

「神の味噌汁」ではなかった。
「神のみぞ知る」と言ったのだ。

おかちゃん。
使い慣れん言葉使うなよ。