若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

衝撃の変身

近所の散髪屋「ヘアーサロン・アート」が改装工事中だった。
バス通りに面した、大きなガラス窓のある店だ。二十年か三十年前に開店したときはかなりモダンな店構えだったと思う。今でも古びた感じもしないし、特に改装が必要とは思えない店を、どう変えるのか興味があった。
「超モダン!」になるのだろう。

昨日、工事用のシートがはずされたのを見てびっくりした。
「和風」なのである。日本で和風に驚いてどうする。もっともな意見だ。
しかし、散髪屋ですよ。
和菓子屋でもなければそば屋でもなく呉服屋でもないのに、モダンなお店を改装して白壁に黒い瓦である。なにがおかしい、と言われても困るが、「気合の入った和風!」がなんとなくヘンだ。

大きなガラスだったところは格子になっている。格子ですよ。♪ここは奈良町大正ロマン、という雰囲気だ。いや、江戸時代の床屋のイメージだろうか。時代劇のセットという感じだ。
ここが新興住宅地じゃなくて、歴史的町並みなら、周囲の景観に配慮した理髪店ということで、奈良市から表彰状をもらえるかもしれない。
しかしこれは周囲の景観から浮いた伝統的建築である。

改装なった店を見て私は首をひねった。かなりのポリシーというか主義主張がなければできないと思った。あの、モダンなお店がなぜ?
モンモンとしながら家に帰ると、家内が、散髪屋さんのチラシが入ってると言う。チラシを見て驚いた。オールカラー、浮世絵調である。「若旦那」や「おいらん」の絵が刺激的だ。
中央の絵は、たすきがけの江戸の床屋さんが、布袋さんだか寿老人だかの長い頭をそっているところだ。

なんと、店の名前も「ヘアーサロン・アート」から、「ArtSpace和咲(わしょう)」になっているではないか。
「和風空間としてリニューアルオープン」と書いてある。
ボーゼンとしてしまった。いくら構造改革を叫ぶ小泉さんだって、ここまでやられたら驚くだろう。

チラシの裏が価格表になっている。
「殿方用メニュー」「姫君用メニュー」
完全に私の負けだ。
別に散髪屋の主人と私が勝負をしたとかけんかをしたというわけではないが、負けた!と思った。
とりあえずこの決断に敬意を表したい。