若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

義父を描く

「義父を描く」と口に出していうのは、ヘンである。
書くとヘンではない。

「義父」というのがおかしい。
「義母」もおかしい。

「ことば」になってないと思う。
「記号」ですね。

「義父」「義母」にあたる適当な日本語がない。
必要なかったんでしょうなあ。

まあ、便利だから、「義父を描く」にしておきます。

去年、「義母」を描いた。

義母が、描いてほしいといったので描いた。
80過ぎの女性を描いて、本人にも満足してもらえるような絵になるだろうかと心配したけど、まあ、だいじょうぶであった。

それを見て、義父が描いてほしいといったのは意外だった。
なぜ意外に思うのかと聞かれても困るが、意外だった。

本人に満足してもらうのは大変ではないかと思えた。
髪の毛一つ取っても、義母は豊かである。
染める必要もなく、いい感じである。

義父の髪の毛は、だんだん豊かでなくなってきてる。
「髪の毛、豊かでなくなってきてますなあ」と言われてるような絵は、本人にとっては面白くないだろう。

しかし、描いてほしいというのに、イヤだとはいえない。

で、描きました。
長時間座ってもらうのは無理なので、素早く描くことを心がけた。
若く描くことも心がけた。
どちらも難しい。

描きはじめて、義父の顔を描くのは案外やさしそうだと思えてきた。
なんちゅうか、くぼむところはくぼみ、へしゃげるところはへしゃげきっているという感じで、「う〜む、ここは・・・?」と悩むところがない。

義父の眼を見て、「へ」の字みたいだと思った。
しかし、一筆描きではないし、油絵で「へ」の字はないだろうと思いつつ、眼を「へ」の字に描いてみたら、それでOKであった。

30分ほど描いて、家内に見せたら、若く描けてるねとのことで、安心して義父に見せた。

「じいさんくさい顔やなあ!」

そ、そーですか。
あわてて、「へ」の字の下に丸を入れ、パッチリお眼目にして、髪の毛も大サービスで増量。
不満気ではあったが、何とか納得してもらいました。

続けて描いていると、義父が、「ここのおじいさんは描かんかったですなあ」といった。

自分の親は描かなかったなあ、と思いながら筆を動かしていたところだった。
家内も、そう思いながら見ていたといった。

自分の親は描かず、家内の親を描く。

そういうまわりあわせ、ということですね。