英語で書かれた印象派の本を読んでると、フランス語が出てきます。
「ルノワールはこう言った。『×××××××』」みたいな感じで英訳なし。
で、英語圏の人で印象派関連の本を読むような人はフランス語が分かるんだと思いました。
イギリスの歴史家ウエッジウッド女史の本を読んでたらラテン語が出てきます。
「伯爵は決断した。『××××××』」みたいな感じで英訳なし。
で、ウエッジウッドさんの本を読むような人はラテン語がわかるんだと思いました。
アメリカの探偵小説作家ロス・マクドナルドの本をキンドルで買って読んでました。
このひとの小説は高校時代何冊か読んでます。
私立探偵リュウ・アーチャーシリーズで有名な作家です。
英語で読んだらどんな感じかと思ってアマゾンで調べたら電子版で中編が100円で出てた。
100円ならいいかと思って買って読んでたんです。
小説は、私立学校経営の男が、校長である妹が事件に巻き込まれたんじゃないかと探偵を訪れるところから始まります。
「簡潔な文体」で有名な作家ですが、簡潔すぎて誰が誰に殴られたのかよくわからんのは困ったもんです。
まあ殺されたのが誰かぐらいはわかるのでいいですが。
さて、女性の死体が横たわる床に走り書きがあった。
「Ora pri nobis」
見た瞬間、リュウ・アーチャーの頭にその言葉の意味がよみがえってきた。
20年ほど前の子供時代の記憶だ。
「私たちのために祈ってください。今も、死ぬ時にも」
英訳付きです。
「Ora pri nobis」で「私たちのために祈ってください」と言う意味らしい。
探偵が床に書かれたラテン語に戸惑ってるところへ学校経営者が駆けつける。
探偵は「妹さんはラテン語ができたんですか」と質問する。
「もちろん。教えてたんだから。それより君がラテン語がわかるとはびっくりだね」
「いや、母がカトリック教徒で、よく聞かされたもんで」
探偵小説にラテン語が出てきても英訳付きである。
カトリック教徒にはおなじみのラテン語だけど、プロテスタントにはわからなくて当たり前。
こんな感じですね。
インターネットで調べてみました。
受胎告知の時に大天使ガブリエルがマリア様にお祝いを言うんですね。
先日模写したヤン・ファン・アイクの『受胎告知』にもちゃんと書いてあります。
左の天使像の上に天使の言葉、マリア像の上にマリア様の言葉が書いてあります。
「アベマリア。女の中で祝福された方。胎内の御子イエスも祝福されています」
「私は主の婢女(はしため)。御心のままに」
そのやり取りの後にこの「Ora pri nobis」以下をくっつけて祈りの言葉にしてるようです。
カトリック教徒には耳タコじゃなかった耳になじんだ言葉のようですし、一般人は知らなくても「おしゃれ系」の人たちには「なんか知らんけどアクセサリーについてる言葉」という感じで知られているようです。
せっかくのラテン語ですが、この小説では効いてないと思いました。
そこに探偵の